静脈物流の現状と当社の取り組み(後編)
電子マニフェストを中心として
株式会社 市川環境エンジニアリング(IKE)
経営企画室 島田 康弘
本稿前編では一般消費者には縁遠い、或いは動脈物流に携わられる企業の方でも実態はほとんど知られていないと思われる廃棄物ごとの物流の違いを記述した。後編ではハンドリング対象物(廃棄物)の移動履歴管理票、適正処理完了証書としての役割を持つマニフェストの電子化への取り組みについての業界の現状と課題、そして当社の取り組みを報告する。
管理手法としてのマニフェスト
1991(平成3)年に行われた廃棄物処理法の大改正により、いわゆる特別管理産業廃棄物(前掲の図1. 廃棄物の区分参照)を対象とした管理ツールとして導入され、更に1997(平成9)年に全ての産業廃棄物を対象に導入されて以降、廃棄物管理のために活用されるマニフェストは基本的に産業廃棄物のみに関して用いられているが、先述の通り廃棄物の移動履歴管理票、適正処理完了の証書として用いられている。従来これを紙媒体で行ってきたために間違いが生じたり、削減の可能な人件費が余分にかかるということが起こっていた。これに関して電子化(いわゆるシステム化)した管理を行うことにより作業の効率化の促進や、伝票処理間違いの回避等を行うことが、現在では国策となっている。具体的には平成20年度までに紙マニフェストの30%、平成22年度までに50%の電子化を達成することが課題となっている。

- 図5. マニフェスト・契約・帳簿作成の流れ

- 図6. 電子マニフェスト運用の流れ(1次・2次共に電子マニフェストの場合)
電子化の現況と今後の施策
当社の顧客(排出事業者)数は数千件であり、持ち込み先(自社施設を含めた中間処理場・最終処分場)は100箇所近くになる。この全てが電子マニフェストシステムを完備できれば、運用が可能となるが、実際は排出事業者、収集運搬業者(一種の3PL業者)、処分業者の知識・関心の低さ、IT化の遅れに伴い、実行されているのは2排出事業者に過ぎない。今後、関係企業への(1)啓蒙活動(特に排出事業者に対するもの)、(2)知識・技術修得の場の提供、(3)業界組織主導での業務フローやシステム構築(ASP業者の採用など)、(4)対応機器整備や教育・啓蒙活動に対する補助金等の経済的インセンティブの整備、或いは(5)電子化促進の為の法的措置、等が必要と思われる。
IKEの取り組み
1. 社団法人全国産業廃棄物連合会マニフェスト推進委員会での取り組み
社団法人全国産業廃棄物連合会は産業廃棄物処理業者が構成する各都道府県協会のアンブレラとなる組織であるが、そこでは現在、環境省の呼びかけにより、電子マニフェストの運営を行っている財団法人日本産業廃棄物処理振興センターと三者で協議し、普及に向けた方策を議論している。また建設9団体とも協議の場を持ち、様式の共通化やASP事業の内容等、団体間で協議が必要な事項について話し合いを進めている。
政府の目標値は平成20年までに普及率を最大30%まで高めることとなっており、更に首相を本部長とする「IT新改革戦略」においては平成22年度までに普及を50%にまで高めることになった。
しかしながら普及率は先述の通り現在3.5%に止まっているため、達成をすべく三者の協議が開催され知恵を出し合っている。また、上記のような会合での議論を発展させるための取り組みのひとつとして、下部組織である社団法人千葉県産業廃棄物協会では、環境省や千葉県といった産業廃棄物処理業者を監督する行政側と協働で、排出事業者向けの電子マニフェスト導入の説明会を10月20日に開催している。
2. 学会・研究会、啓蒙活動への参画
当社が関わっている大学や学会はここ2年だけでも、千葉商科大学、日本環境共生学会、上智大学、廃棄物学会、RCC(Ryuken Material Flow Consulting Center:株式会社流通研究社内の物流研究会)、といったものがあり、そこでのシンポジウム出演、講義や講演を通して循環産業・静脈物流についてその役割の重要性と理解を訴えている。またそれだけでなく、中央省庁における複数の審議会へも参画しており、 これまで得た知見を政策に反映させるべく、産学官に対し発信している。

- 写真2. 講演を通じての啓蒙活動
3. IT化実施例:機密書類処理・リサイクル分野のトレーサビリティー
当社では、機密書類処理・リサイクル分野について、既にIT化がほぼ実現している。システム会社と連携し、GPS(Global Positioning System)、バーコードリーダー、携帯電話を活用し、排出事業者からの回収、運搬、荷降ろし、処分(溶解・リサイクル処理)、顧客への作業終了報告までを追跡管理し、要求される機密保持とリアルタイムの動態管理・報告を図り、かつ機密書類リサイクルを実現している。詳しくは、
http://www.sssbox.com/ を参照されたい。
おわりに
当社が廃棄物処理業者として取り組むべきもう一つのことは、顧客のニーズを満たすことや社会的な説明責任を果たすことである。排出事業者あっての商取引となるため、顧客としての排出事業者のニーズを満たすことが前提となり、更には排出事業者の選好に適うビジネススキームの提案ができなければ、廃棄物処理業者は市場においては勝つことができないことは言うまでもない。しかしながら、企業の社会的責任を果たすためのヘルパーの役割を廃棄物処理業者が担うことで排出事業者のニーズを満たせることから、また廃掃法上、排出事業者責任が厳格になっていることからも、廃棄物取扱いの業務に関する電子化やコンプライアンスは排出事業者と廃棄物処理業者がタッグを組み成し遂げるべきものであると言うことが出来よう。従って、リサイクルの推進や、適正処理の管理ツールとしての業務電子化の成否は、まさに排出事業者・行政・廃棄物処理業者の連携に拠るものであることを、このマニフェストシステムの電子化が遅々として進んでいない状況に鑑み、今一度指摘したい。次号では、複雑な廃棄物物流管理のシステム化推進の第一歩である電子マニフェストの運用について述べることにする。
筆者プロフィール
- 島田 康弘 (しまだ やすひろ)
- 連絡先:株式会社市川環境エンジニアリング 経営企画室
- 所在地:千葉県市川市田尻2-11-25
- TEL:047-376-1715
URL:http://www.ichikawakankyo.co.jp/

