包装から物流、社会を考える(第一回)
物流効率化と環境保全のために
株式会社 流通研究社
<RYUKEN マテリアルフロー研究センター>
流研コンサルティングセンター(RCC)
統括マネージャー 橋爪 文彦
はじめに
「包装は口紅から機関車まで」、「物流は、経済の暗黒大陸」という言葉を聞かれたことがありますか?包装の世界は広く、前者は、口紅の包装は、売るための包装としての「商業包装(消費者包装)」であり、機関車の包装は、運ぶための包装としての「工業包装(輸送包装)」を意味します。物流は時代的であり、後者は、1960年代前半に、アメリカの著名な経済学者P.F.ドラッカー氏が、日本を訪れ、その当時の日本の「物流実感」を一言で言い表した言葉です。今月号から3回に亘り、包装から考える物流、社会を紹介させていただくことにします。
その結果、包装に対する再認識をいただき、皆さんの身近な段ボール箱、ビール缶、ポリエチレン袋等、……、そして、なかなか目に触れる機会が少ない大型の輸出木箱包装、海上コンテナ等…に対する見方が変わり、皆さんの企業活動、社会生活での包装に対する理解が深まり、最終的に、産業界での物流効率化、一般社会での環境保全、省資源、省エネルギー等に役立てていただければ幸いです。
また、直接包装業務に携わっている方々には、自分の業務を再認識いただき、新たな挑戦につながれば、同業界人として何より嬉しいことです。

- 「商業包装」例

- 「工業包装」例

- 「輸出木箱包装」例

- 「海上コンテナ」例
包装の基本概念
先ず、製造企業において包装が関与する工程を見てみると図1「包装の関与」のとおりです。すなわち、物(製品・商品)のニーズ・シーズの初段階から最終段階の廃棄、処理に至ります。すなわち、生まれる段階から、役目をはたして、再度、世の中に出るか(リサイクル)、別の世界(エネルギー、埋立て等)に至るまでの工程を持っていることがわかります。さらに、詳細に見ると、製品・商品戦略と同期化した包装戦略、そして、生産段階における製造原価の中での包装原価、物流段階での品質、サービス、価格にも大きく関与し、最終段階では、消費者での開梱、再包装、廃棄・処理での使い勝手としてのサービス、安全等にも関係しているわけです。

- 図1. 包装の関与
次に、具体的な包装仕様決定(設計)のステップをみると図2「包装仕様決定(設計)」のとおりです。すなわち製品特性と物流特性を把握しながら、包装技術を生かし、包装特性を決めることになります。この関係を定量的な数式で表すとA-B≦C(基本式)となります。
基本式において、Aは、物流特性(条件)であり、Bは、製品特性(条件)で、Cは包装特性(条件)となります。以上の包装の基本的な考えをベースに、最終的には、Cの「極小化」を目指しながら、製品・商品との関連と同時に、物流の他の機能との関連も見ながら、品質、サービス、価格という物流サービスの基本要素の中で、物流の全体最適化を求める作業があります。また、一方では、この三要素とはトレード・オフの関係も出てくる「環境保全、省資源、省エネルギー」等の社会的な要請に対する最適化も求められます。これらのことを考えると包装の役割を一言で「商品の保護」だけでは、片付けられない複雑な役割があります。以上、包装の世界は、素材自体、技術自体は、単純で、簡単に評価されがちですが、内容自体は複雑なものであることが、おわかりいただけたと思います。

- 図2. 包装仕様決定(設計)
包装と製品・商品
前述の基本式におけるCとBとの関係を考えてみたいと思います。基本的に、Cの極小化が、価格、省資源、省エネルギーそして環境保全的に最適であることは、理解いただけると思います。CとBの関係は、唯単なる物理強度的な関係ばかりではなく、Bを生かすための戦略的な関係(包装のデザイン、イメージ案)、化学的(湿度、ガス等)関係等がありますが、ここでは、理解を容易にするために、物理強度的な面で説明します。すなわち、Cを極力小さくするためには、この基本式でBを「大」にすれば良いことがおわかりいただけると思います。すなわち、製品の強度特性を大きくすれば、包装の強度特性は、小さくて済むわけです。そのためには、製品の剛性を上げたり、形状的に強くする等があります。
ただし、一方では、Bを「大」にするために、価格増になったり、形が大きくなったりすると、全体的な価格増につながることが出てきます。すなわち、CとBとの関係で如何に最適であるかが求められるわけです。その意味で、包装担当者は、唯単なる段ボール、各種緩衝材等の技術だけでなく製品自体に対する技術、知識が求められます。
また、全体最適化に対する製品側への説得力、技術力等も必要になり、別の能力も求められるわけです。具体的には、成果例として、家庭電化品で製品開発段階からCとBとのバランス(形状、強度等)を考えて設計し、物流全体のことも考えながら、仕様を決め、最終的に他社、旧類似機種に勝る仕様を打ち出し、利益増につながった例があります。また、新商品の戦略を包装の戦略としてのパッケージ・デザインに生かし、市場を大きく伸ばした商品もあります。包装の仕様決定(設計)作業は、その難しさと同時に、戦略性、創造性という人間本能の「思考」の喜びにも出会うことができるわけです。苦労の中の面白さ、満足感が味わえる世界であります。
包装と物流機能
物流機能にはご存知のとおり、包装、輸送、保管、荷役、情報そして流通加工があります。ここでは、前述の基本式で見るとCとAとの関係を考えます。
よく、包装は生産の最終段階であると同時に、物流の始まりで、終わりとも言われます。この言葉は、包装が、物の生産だけではなく、物流機能の全てに関係していることを良く表しています。そして、物流の往路(生産→消費)を動脈物流と、復路(消費→生産、消費→廃棄・処理)を静脈物流とすると、両者に関係することもおわかりいただけると思います。
包装の体積、重量、仕様等によって、輸送・保管・荷役の効率すなわち費用が決まり、包装の表示によって情報効率(費用)を大きく左右するわけです。また、近年流通センター機能や輸出入物流の拡大により、流通加工が多くなり、そこでも包装の体積・重量・仕様等によって流通加工での作業効率が大きく変わることが理解できます。一方、基本式のCを小にするためには、Aを小にすることが必要で、Aの重要性が出てきます。すなわち、輸送、保管、荷役、情報各品質の向上(物理強度的には、Aの極小化)が望まれますが、最終的には、CとAのバランス(最適化)になります。例えば、包装体積と輸送積載台数、許容積段数と保管台数等であります。また、包装のCを小さくするために、輸送条件の緩和(バン型車化、エアーサスペンション化等)、保管条件の緩和(ラック化、パレット化等)、荷役の緩和(機材の使用、ユニットロード化等)そして情報の緩和(表示の簡略化、機器の精度向上等)があります。これらの関係は、一般的に価格的に見るとトレード・オフになる場合が多い訳ですが、全体がWin-Winになる技術改善もあり、また、全体最適(トータル思考)をどう見出すかが、最大の課題になります。
包装と物流管理
物流管理の基本は、前述のとおり、物流サービスの三要素である品質、サービス、価格の面で最適化を図ることです。システム的には、在庫縮小、輸送費削減等による全体の最適化はありますが、ハード面では、包装を中心とした最適化があります。基本的には、物流費を決める要素となる包装の体積・重量・仕様の適正化になるわけですが、包装と物流各機能の間には、トレード・オフになることが多いわけです。
それゆえ、物流管理の基本は、このトレード・オフの関係になり勝ちな各機能との関係を如何に「最適化」するかであります。確かに、物流サービスの中で、物流(流通)センターを中心とした輸送、保管、荷役そして情報の面での話題は華々しく、システム的ですが、その中での“個体”は、包装された商品であることを忘れないで欲しいものです。それゆえ、物流あるいは物流効率化の原点は包装にあることも。
そして、各種の包装と物流各機能との関連をシミュレーション手法で最適化を見出すことです。左軸に、各種の包装をとり、右軸に各要素(要因)をとり、トータルとしての評価をすることです。実際の評価作業においては、数値的に難しいときは、評価段階による定性的評価でもよいと思います。そして、最終的には、各企業の企業ポリシーとウエイトづけで総合的な評価を出せばよいわけです。
まとめ
物流最適化は、品質、サービス、価格の面から評価すべきものですが、この三要素と物流各機能の全てに関係する包装の重要性がおわかりいただけたと思います。その意味では、物流の原点は包装であり、物流効率化のキーも包装にあることも理解いただいたと思います。それゆえ、物流の最適化を図るうえには、SCM、WMSやTMS等を駆使したシステム構築と同時に、物(製品・商品)に伴う包装を中心とした全体最適化が必要です。以上、包装と物流を中心に、概念を紹介してきましたが、個々のケースについての詳細は、別途とし、基本がおわかりいただけたなら幸いです。
筆者プロフィール
- 橋爪 文彦 (はしづめ ふみひこ)
- 経歴
- 電機製造企業にて、包装からの物流最適化の実務(24年)
- 物流専門企業にて、物流技術を通じ物流最適化の提案営業(10年)
- 包装専門企業にて、包装を通じ物流最適化の提案営業(9年)
- 現在
- 流通専門誌発行出版社にて、研究会・勉強会・見学会の運営
- 中小企業の物流の研修講師・コンサルティング
- 物流関係の学校・機関の研修講師、物流関係誌での記事・連載講座等


