「現場力」が物流センターを進化させる
物流センターの合理化改善に関する取り組み

山根技術士事務所
代表 山根 幹大
商品や物量が日々変化する中にあって物流の機能および生産性を高めていくために、物流センターは、商品の流通過程における中核施設いわばSCMにおけるロジスティクスセンターとして進化し続けなければなりません。
この進化の源泉としては先端技術の導入以前に物流の原理原則が重要であり、いわば物流の“現場力”がいま問い直されているように思われます。
そこで本稿は、物流センターの合理化改善に関する取り組みの一端をご紹介し、物流センターの運営管理にたずさわられる方々へのご参考に供したいと思います。
「物流診断」を活用して、合理化改善テーマのヒントをつかむ
物流の合理化改善に当たっては、まずそのテーマ(目的)と目標を明確にしなければなりませんが、現実の中からの発想では設定しにくい場合が多いと思われます。一般にベンチマークやイマジュレーションの手法などが有効とされますが、Web上に提供されている「物流診断」が簡易的なベンチマーキングとして実用的と考えます。この「物流診断」は、物流センターや輸配送等のロジスティクス現場において、企業の物流活動が適正に機能しているかどうかを定量的に評価し、物流完成度として提言するソフトウエアパッケージです。問診形式で行われ、設問に回答することで多面からの物流診断が実行されます。いろんな切り口で提供されていますので、目的に合わせて利用できますが、たとえば、SCMの視点から評価するものとして、「SCMロジスティクススコアカード」があります。
また、物流センターの視点からの評価例を「図1」に示します。

- 図1. 物流診断の評価例
WMSを使いこなして、物流の特性変化に対応する
従来WMSのシステム開発やパッケージは、要件設定に基づいて開発導入し初期トラブルが収束すればその後のソフト改造はあまり行われていないのではないでしょうか。しかし、現場の運用・作業は、日々変化する商品や物量に対応しなければならず、WMSに縛られて作業およびスペースの生産性を犠牲にしている現場が多々見受けられます。つまり、これからのWMSは、現場の運用・作業の変化に対応して、現場サイドの意思やパラメータの変更等で容易にシステム改善ができる柔軟性の高いユーザーフレンドリー型でなければなりません。
また、ある物流センターでは100の投資をしてWMSを導入したものの、現場の意向を理解せずにシステム設計が進められたために立ち上げ時に大混乱を生じ、改造のために150の追加投資が発生しました。しかも安定させるのに5カ月を要し、WMSに“使われて”作業の生産性は3分の2に低下したという深刻な事例すらあるのです。
また、モノと作業と情報の一元化やリアルタイムのコミュニケーションに有効な手段として、無線のハンディターミナルを活用することが一般化していますが、収集した実績データをうまく活用されていないことが多いのではないでしょうか。生産性向上のために積極的に活用すべきであり、その一例を「図2」に示します。

- 図2. ABCコストシュミレーションの例
基本条件を見直して、運営効率を高める
物流センター計画時の基本条件は物流センター運営の大前提ですが、作業およびスペースの生産性 を左右する重要な概念が含まれており、商品や物量の変化に対応するために見直してみるべきではないでしょうか。
(1)ストックロケとピッキングロケの関係
一般に、出庫の作業性や先入れ先出しを重視して「図3-A」の構成とし、ピッキングロケを小さく設定し、ストックロケも管理します。しかし、シーズン商品などの一斉入荷の場合は、「図3-B」の構成とし、ピッキングロケを大きくしストックロケは現場管理とするのが合理的で作業およびスペースの生産性が高い場合があります。このように、ストックロケとピッキングロケの関係は物流特性の実態をもとに見直してみるべきです。

- 図3. ストックロケとピッキングロケの関係
(2)在庫のアンマッチをなくす
理論在庫と現場在庫の一致は物流センター運営の大前提であり、作業の生産性を向上していくためには在庫のアンマッチをなくすことが不可欠です。在庫アンマッチの発生原因は、入荷検品ミス、誤入庫、商品の誤移動、誤出庫、誤出荷、棚卸し作業ミス、センター内破損・紛失等多岐に渡りますが、多くの原因は業務プロセスの不備と運用の不徹底にあるため、作業の仕組みを見直し、マニュアルを整備・徹底し、少なくとも保管ロケの不一致をなくさなければなりません。
(3)既存の自動化施設をもっと活用する
日々変化する商品や物量に対して、自動化設備の対応が置き去りになって有効に活用されていないケースが多々見受けられます。時には物流センター運営のネックになっているにもかかわらず使用されていたり、導入して1年もたたないのに撤去されることもあります。自動化設備は固定設備との先入観を捨てて、積極的な有効活用について定期的に見直してみるべきです。
波動対応力を高めて、人時生産性を向上させる
日々変化する商品や物量、オーダーごとに異なる作業内容、まさに物流の現場は生き物であり、刻々と変化する作業に対してムリ・ムダ・ムラをどれだけ無くせるかが物流センター運営の重要課題です。つまり、物流センターの耐力および人時生産性を向上するためには、取扱商品の変化、入荷量・入荷条件の変化、保管量・保管日数の変化、出荷量・出荷条件の変化等、物流波動への対応力を高めなければなりません。
一般に、物流センター内の業務には、入荷受け入れ、入庫、出庫、加工、検品、梱包、荷揃え、出荷等の基本作業以外に、補充、ロケメンテ、特殊加工、返品処理、棚卸し、作業管理、資材管理、システム管理、事務処理、改善活動等の関連作業があります。従って、各作業の波動に対してボトルネックを強化すると共に、複数の作業に対応できる補完体制の強化(たとえば、作業者の多能工化)が重要と考えます。
また、物流センター運営上の改善課題は多岐に渡り、しかも刻々と変化します。この改善課題は通常、受注・出荷条件、仕入れ・入荷条件等の外部条件および物流センター内の各職場が相互に密接な関連を持っているため、職場単位の改善活動ではうまく解決できません。そのため、プロジェクトマネジメント手法の活用が有効であり、その概要を「図4」に示します。

- 図4. プロジェクトマネージメントの概要
備考:(財)エンジニアリング振興協会
http://www.enaa.or.jpがPMの調査・研究・普及活動を行っている。
物流人財を育成して、“現場力”を高める
現場力の重要性を認識すればするほど、物流人財の不足が問題視されその育成の重要性が高まります。人財育成は、いろんな団体や企業内で多様なプログラムが開発され実施されていますが、最近の公的施策や研究にも注目したいものです。
- ●~提案営業の強化に向けて~「3PL人材育成研修」
http://www.butsuryu.or.jp/3pl/main.html- ●職業能力評価基準のロジスティクス分野(運送業部門・倉庫業部門)
<ロジスティクス分野における汎用的な職能要件と評価基準を体系化したもの>
http://www.hyouka.javada.or.jp/- ●生涯職業能力開発体系作成支援システム
<システムの概要を「図5」に、MH業界の概要を「図6」に示します>
http://www.ehdo.go.jp/station/tool/index.html

- 図5. 人材育成の流れと支援ツール

- 図6. MH業界の生涯職業能力開発体系
今後、ますます多様化高度化する消費者ニーズ、商品および流通経路の多様化、流通構造の進化、循環型社会の実現など、ロジスティクス環境の変化に対応するために、物流センターの役割が重要視され進化し続けることを期待されています。その推進役は“現場力”でなければならないし、“現場力”の高度化・強化が今求められているのではないでしょうか。
筆者プロフィール
- 山根技術士事務所 代表 山根 幹大
- 下記URLをクリックしてご覧ください。
http://homepage2.nifty.com/LCC/

