物流センターの企画とリニューアルのあり方
物流センターの合理化改善に関する取り組み

山根技術士事務所
代表 山根 幹大
物流センターは、商品の流通過程における中核施設、いわばSCMにおけるロジスティクスセンターとして重要な役割を担っています。この物流センターは、企業内外の環境条件によってその位置付けや要件が異なるために、個々の用途に最適なシステムを創り出されなければならないばかりでなく、環境変化に対応すべく適時リニューアルされなければなりません。そこで本稿は、物流センターの企画段階において留意したい事項をご紹介し、物流事業にたずさわられる方々へのご参考に供したいと思います。
物流センターの位置付けと目的の明確化
メーカーから小売店舗への商品の流れ(以下“物流チャネル”という)は、商品の特性や取引条件などを前提として、顧客ニーズへの迅速な対応、店舗内のローコストオペレーション、流通在庫の最少化、物流コストの削減などの達成に向けて最適化されます。この物流チャネルは、流通過程における物流センターの位置付けによって、「図1」のように8つのタイプに整理することができます。タイプII、VI、VIIが現在の代表的な物流チャネルと言えますが、実際の流通現場では通常複数のチャネルタイプが混在します。

- 図1. 物流チャネルの基本類型
物流センターの役割と機能・特性は、この物流チャネルにおける位置付けによって大きく変化するため、物流センターを企画あるいはリニューアルする場合にはまずその位置付けと目的を明確にしなければなりません。フランチャイズチェーンにおける物流センターの位置付けとその目的・役割を定義した事例を「図2、3、4」に示します。

- 図2. フランチャイズチェーンにおける物流センター

- 図3. 物流センターによるリテールサポート

- 図4. 物流センターによる仕入先支援
物流センター構築の基本過程と設計手順
物流センターの構築およびリニューアルの基本的な過程は、おおむね「企画段階」「計画段階」「実行段階」と考えられ、各段階の業務概要を「図5」に示します。最初の「企画段階」は、ユーザーが中心になってロジスティクスコンセプトを確立し、物流センターの基本構想を創り、実施の方向を決定する最も重要な段階で、戦略的なアプローチが必要です。この段階のシステム設計は「図6」の手順で行います。
「計画段階」は、企画段階での実施決定を受けて専門家が中心になって行う、物流センターの基本計画および基本設計の段階であり、「実行段階」は、計画段階での基本設計に基づいて発注者の監理の下にベンダーが責任を持って行う、実施設計から物流センターの完成・運用までの段階です。

- 図5. システム構築の基本過程と業務

- 図6. 物流センターのシステム設計手順
物流センター企画のあり方と注目すべきロジスティクス動向
物流センターの「企画段階」における基本的な留意事項を「図7」に示します。

- 図7. 物流センター企画のあり方
■(1)基本コンセプトの明確化
ロジスティクス戦略の実現には長期間を要し、物流センターの耐用年数も相当長期です。従って、物流センターの計画に当っては、長期的な視点での一貫した基本コンセプトを明確にしなければなりません。
そのためには将来をどう予測するかが重要です。
たとえば、ロジスティクス戦略の方向性の見方として、現在話題になっている物流業界のキーワードを、物流サービスと企業統合(協業)のレベルでマッピングした一例を「図-8」に示します。
また、(社)日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が2010年頃のロジスティクスに関してアンケート調査を行っています。ロジスティクスを論じるうえで、いま、どのような課題があり視点があるかについて、(1)ロジスティクスマネジメント、(2)グローバル化、(3)IT、(4)新技術、(5)環境・エネルギー、(6)人材・労働力、(7)物流政策、の7テーマを抽出し、ロジスティクス全般の状況について、会員企業の実態と意向を把握しています(回答企業309社)。「図9」は、(1)ロジスティクスマネジメントのアンケートの内、「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計が4分の3以上であった将来仮設です。

- 図8. ロジスティクス戦略の方向

- 図9. ロジスティクスマネジメントのアンケートで
「そう思う+どちらかといえばそう思う」が4分の3以上の項目
なお、最近の公的施策等にも注目したいものです。
- ●2005/10/01施行「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」
- ●2005/11/15政府「総合物流施策大綱(2005-2009)」
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/15/151114_.html- ●2006/01/12日本ロジスティクスシステム協会「ロジスティクスコンセプト」
http://www.logistics.or.jp/logi.html- ●2006/02/08東京都「総合物流ビジョン~東京からはじまる物流改革~」
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2006/02/20g28200.htm- ●2006/04/01施行「改正省エネルギー法」
http://www.enecho.meti.go.jp/policy/saveenergy/save02.htm
■(2)店舗起点による目標設定
従来、とかく物流センター内の合理化・効率化を中心に計画し評価するのが一般的でした。しかし、物流センターは本来店舗など配送先へのサービスシステムであり、物流センター内の合理化・効率化以前に店舗など配送先の合理化・効率化のための機能を中心に置いて計画し、評価すべきです。
■(3)戦略的アプローチによる基本構想
基本構想の検討方法は、従来、現状の調査分析からの発想で計画するいわば“分析的アプローチ”が一般的でした。しかし、今後は従来の延長ではないので、将来の環境変化やロジスティクス戦略に対応するためのあるべき姿をまず描き、現状からの移行プロセスを考えるいわば“戦略的アプローチ”で検討すべきです。
特に、既存の物流センターが存在する移転計画やリニューアルの場合には、意識的な配慮が必要です。
■(4)店別荷揃えからのシステム設計
物流センターの役割は店舗など配送先への納品サービスであり、物流センター内の仕組みは各店舗など配送先にどのような形態・単位・タイミングで納品すべきかを前提として計画すべきです。
つまり、物流センターのアウトプットである店舗への出荷荷揃えを、どのような形態でどのようなリードタイムで行うのか、そのためには物流センター内はどのような仕組みの導入が効果的で効率的か、といった店別荷揃えからの発想でシステム設計を進めるべきです。
今後、ますます多様化高度化する消費者ニーズ、商品および流通経路の多様化、流通構造の進化、循環型社会の実現など、ロジスティクス環境の変化に対応するために、物流センターの新たな企画とリニューアルがいま期待されているのではないでしょうか。
とはいえ既存の物流センターにおいては、日々変化する商品や物量にどう対応するかが重要な現実の問題です。そこで次号では、ロジスティクスにおける現場力の重要性の視点から、物流センターの運用のあり方について考えてみたいと思います。
筆者プロフィール
- 山根技術士事務所 代表 山根 幹大(51歳)
- 下記URLをクリックしてご覧ください。
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