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ストック社会における倉庫の可能性「倉庫リファイン」

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ストック社会における倉庫の可能性「倉庫リファイン」

河田洋平(株式会社イーソーコ総合研究所 経営企画室 室長)

株式会社 イーソーコ総合研究所
経営企画室 室長 河田洋平


私どもイーソーコグループは、倉庫・物流不動産に特化した、物流不動産のマッチングサイト「e-sohko.com」を運営しております。これは、日本最大規模の、賃貸倉庫専門の検索サイトです。全国にASP契約先が34社、現在8,000以上の全国の物流不動産情報が掲載されており、それらが一括で検索できるようになっています。
このサイトからのお問合せが、一日5~60件あり、物件情報だけではなく、テナント情報や土地情報・・様々な情報が集中して来ております。
その集約された情報を基に、新築の場合の土地の選定・資金調達から、企画・設計、テナント誘致、そして施設管理までを、ワンストップでご提供しております。

倉庫リファイン概要

弊社では、昨年より「倉庫リファイン」という新事業を開始いたしました。
これは、建築廃材を最小限に抑えつつ、既存施設の収益性を高める。ということを大きな目的にした事業です。

私は、小学校の終わり頃から高校まで、オーストリアのウィーンという街に住んでいたことがあります。そこで集合住宅に住んでいたのですが、その建物は、築100年の建物でした。それでも周りの方々からは、「河田くんの家は新しいね」と言われていました。
確かによくよく思い出してみると、周りは建築されてから200年、300年経っているものがたくさんありました。その後、引越しをして最後に住んだ家は、築350年の建物でした。 それでも、最新の設備にリフォームされて、とても快適だったので、「古い」という印象はまったくありませんでした。
当時は幼かったので、特になにも感じませんでしたが、古い物を壊して捨ててしまうのではなく、既存の良い部分を利用して、新しいものに生まれ変わらせることが、ヨーロッパではごく自然で当たり前の考え方でした。むしろ、日本のスクラップアンドビルドという考え方の方が、グローバルな視点からすると まれな事だということに気がつきました。

ではなぜ、今、この様な考え方が必要なのでしょうか。

物流・不動産・金融の融合

実は、数年前までは全く接点のなかった3つの業界が、時代の流れの中で、少しずつ融合をし始め、今やその垣根が完全になくなろうとしております。

物流・不動産・金融の融合により、巨大なファンドマネーが、物流不動産に流れ込んできています。

皆様ご存知の通り、プロロジス・AMB・ラサール等の外資系ファンドは勿論、最近では国内ファンドの台頭もあり、最新の大型物流施設が100万坪単位で出来始めています。

最新物流施設の特徴と競争力 

こういった最新のセンターは、ただ単に、規模が大きいだけではありません。
1フロアーが大型で、なおかつ自走式のランプウェーを備えているものが多く、すべて平屋の扱いが可能です。従来の保管型ではなく、TC・DCの両方の機能を備えた、いわゆる通過型の施設へとシフトして来ています。
当然、縦搬送に比べて、倉庫内のリードタイムは短縮できますし、設備レイアウト変更等の自由度が高いので、流通加工の為のソーターや自動ラック等のマテハン機器の導入が容易です。

大型汎用センターでの物流システムイメージ
<大型汎用センターでの物流システムイメージ>

建築の付帯設備としては耐震性能等の構造面はもちろんのこと、綺麗なエントランスやユーティリティスペース、特に広くて綺麗なお手洗いは、女性のパートさんには喜ばれているようです。
そこまで良いものなら、賃料がものすごく高いのではないか…というと、そんなことはなく、相場並みで供給されております。
倉庫・物流施設としての「機能面」では、どうしてもこれらの最新施設に軍配が上がってしまいます。某・大手物流会社さんなどの、いわゆるグローバルロジスティクス企業は、今まで点在していた自社の施設を、最新施設に集約する動きが活発です。
例えば1万坪の巨大センターに集約を図るとすると、2~3000坪クラスの倉庫に空きが出ます。すると、その2~3,000坪の施設に集約をかける方々が出はじめ、次に数百坪クラスの倉庫が空いてきます。
この様に、倉庫・物流センターの玉突き現象が起こっており、結果として、中小クラスの物流施設に空きが増えております。
現に、弊社が運営しております、e-sohko.comに掲載されている物件数が、1年程前には4,000物件程度でしたが、現在8,000件を超えております。
たったの1年間で倍増しており、この現象は今後も拡大していくと考えられます。

この様な集約現象は、横もちの物流コストの削減、環境面でのCO2排出量を抑えるという意味では大変喜ばしいことでありますが、また新たに考えるべき問題が発生したということになります。

では、この様に空いてしまった施設は、どうすればよいのでしょうか。

そのまま居抜きで賃貸しできるのであれば、それはもちろん一番ローコストで、環境に優しい方法でもあります。我々もその様なマッチングができるように、努力をしておりますが、これら膨大な数の物件すべてあてはまるかというと、そうではありません。
では、その一部の補修や改修をして、また新たな倉庫・物流施設として甦らせればよいとも考えられますが、敷地面積(土地面積)が限られている中で、建築基準法などの様々な法規を遵守した上で、更に現在のサプライチェーンマネジメントに即した最新施設に生まれ変わらせるのは、残念ながら難しい例が増えてきているように感じます。

そうしますと、そろそろ建替えを・・というのが、従来のいわゆるスクラップアンドビルドの考え方であり、今まではそれを繰り返して参りました。

倉庫の長所 

しかし実は従来型の倉庫・物流施設というのは、建築的に見ると、優れた点をたくさん持っています。
特徴としては大きく2つありまして…

   ① 他の用途の建築物に比べて、かなり強固な躯体(構造体)を持っている
   ② 柱スパンが大きく、天井高も高くとってある為、自由な大空間を持っている

この様な、倉庫としては当たり前の特徴ですが、一般用途の建築物には無い、大変稀有な長所を、生まれながらにして持ち合わせています。
これを、完全に取壊してしまうには余りにも惜しいことだと感じます。

また新たに建築するという、従来のスクラップアンドビルド方式しか方法はないのでしょうか…。
そのほかのアプローチは無いのでしょうか…。
といったところから、冒頭で申し上げました「倉庫リファイン」という考え方にいたりました。

次にここに至るヒントとなった、過去の実例をご紹介したいと思います。

実例1 横浜・赤レンガ倉庫

これは、皆様よくご存知の、横浜みなとみらいにあります、赤レンガ倉庫です。これはまさにもともと、築約100年の倉庫を、近代的な複合商業施設に変身させた例です。
ただしこれは倉庫の中でも非常に特殊な例でありまして、構造的な長所というよりは、歴史的な価値の保存に重点を置き、全く新しい価値を生み出した、大成功例といえるでしょう。

赤レンガ外観
赤レンガ外観
赤レンガ内部
赤レンガ内部

実例2 パリ・オルセー美術館

これも皆様よくご存知の、パリのオルセー美術館です。これは、西暦1900年のパリ万博のためにつくられた、旧オルセー駅の駅舎として建てられました。
その後、1939年には鉄道駅としての役目を終えまして、様々な用途に用いられていました。一時は取壊しの話もあったようですが、1970年代からフランス政府によって保存活用策が検討され始め、1886年に、現在のオルセー美術館が開館いたしました。
これは倉庫ではありませんが、強い構造体と大空間という、これと同じポテンシャルを既存の倉庫は生まれながらにしてもっているのです。
このポテンシャルを生かして、我々の持っている倉庫・物流施設を再生して行くことが、リファイン事業の核心なのです。

オルセー美術館外観
オルセー美術館外観
オルセー美術館内部
オルセー美術館内部

「倉庫リファイン」第一号案件

というように、過去の事例をご紹介して参りましたが、次に、つい先日完成いたしました、弊社の倉庫リファイン事業、第一号案件をご紹介いたします。これは、弊社の事務所がある倉庫ビルの一部ですが、ここは二層吹き抜けになっておりまして、階高は約7m、そして約800坪の無柱空間がございました。この特徴を活かして、オーナー様のご協力の元、倉庫リファインを行いました。

イーソーコ総合研究所が、総合監修に入らせていただきまして、まずビル全体の耐震診断を行いましたところ、外壁に穴が開けられることが分かったので、窓を開けて光を取り込むことにいたしました。
テナントは、広告代理店大手の博報堂さんと米国の広告会社、TBWAが合弁で設立したTBWA HAKUHODOという総合広告事業会社さんに入居して戴くことになり、弊社が内装監理室としての役目を果たし、その結果、世界でもあまり例の無い、クリエイティブなオフィス空間を作ることに成功しました。

「倉庫リファイン」第一号案件
「倉庫リファイン」第一号案件

倉庫リファイン これからの展望

この案件のように、倉庫には非常に大きな可能性があります。現在のマーケットニーズに適した建物へと用途を変えることも検討し、既存物件の収益性・資産価値を上げることが可能になります。例えば、今回のようなオフィス・レストランなどだけでなく、強固な構造体が要求される郵便局や学校・庁舎などの公共施設や、市街化調整地域に建つ自家用倉庫を福祉施設に再生させる等々…倉庫は無限の可能性を秘めています。

もう単なるスクラップアンドビルドの時代は終わりを告げようとしています。
ここ数年来叫ばれております、ストック社会に対応して、時流に乗って行く為には、いかにうまく、現在在る強固なインフラを活用して行くのかを、考えて行かなくてはいけません。
ヨーロッパがそれほど成長率もなく、GDPも少なくても、社会が大変豊かであるのは、このような古くからの遺産が残されていて、インフラが整っているからだといえます。
この様な考えのもとで再開発を進めていくことが、当然、将来の環境保全にもつながりますし、ひいては、皆様が豊かな生活を送れるような社会をつくる上では、必要不可欠なことであると考えます。

筆者プロフィール

河田 洋平(かわだ ようへい)
連絡先:株式会社イーソーコ総合研究所 経営企画室
所在地:東京都港区芝浦1-13-10
TEL:03-5441-1237  
URL:http://www.e-sohko.co.jp/index.php /  E-mail:y-kawada@e-sohko.com
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