SCMにおけるリターナブルパレットの実践推進
SCMにおけるリターナブルパレットの実践推進 
株式会社 拓洋
顧問 エコロプランナー 中村 奎吾
曙ブレーキの海外からの原料調達を例として、「環境負荷を低減しながら物流コストの削減」を目指したリターナブルパレットの開発背景と、その実践効果をレポートする。今後の「環境に優しい輸送容器」のあり方のヒントになれば幸いです。
従来の輸送容器の問題点
5年前から曙ブレーキではインドからブレーキに使う鋳物素材を調達している。当初、現地調達拠点では万国共通のどこでも入手可能な木材で木枠梱包が行われていた。現地からコンテナ船で日本のハブ港に着き、コンテナを開けると木枠梱包にかなりの破損がある。当然、調達素材にも悪影響が発生していた。この一連の輸送を生産にたとえれば、歩留まりの悪い工場ということになる。また、木枠は片道輸送しか考えていない設計なので、手でばらして廃材として処理せざるを得ない。当然、産廃費用が発生していた。
曙ブレーキに限らず、世界中にグローバル展開するメーカーにとって、こういった問題は日常茶飯事であったと思われる。
問題は見えているのに解決は試行錯誤
日本と海外の生産拠点、あるいは流通拠点間の輸送容器を片道限りのワンウェイパレットから繰り返し使えるリターナブルパレットにシフトすることは誰しも考えることである。その場合に当然ながら考慮すべき要点は下記4点である。
①何度も繰り返し使える
②メンテナンスが簡単
③廃棄物を出さない
④トータルコストが削減できる
再び曙ブレーキに話を戻し、鋳物素材調達に関する物流容器の問題解決に向けて行ったアクション概要を以下に記述する。
①鋳物素材の保管場所(インドではなく、日本に送られてきた状態)に行って現状木枠梱包の問題点の把握と抽出作業。
②何度も使えるリターナブルパレットの検討、設計、試作を実施。設計段階で考慮した要件としては、
・鋳物素材が最大1トン入ること。
・3段積みで海上コンテナ輸送できること。
・折りたたみが可能で部品交換がどこでも誰でも簡単に出来る構造にする。
・製造はコストの高い日本ではなく海外で行う。
③開発されたリターナブルパレットはメーカーが所有(購入)するのではなく、パレット管理会社が所有し、メーカーまたは物流会社にリース、レンタルする。

- <箱の循環サイクルフロー>
最近になって京都議定書からくるグリーン調達、グリーン物流パートナーシップの推進等により、環境問題解決用語のキーワードとして、「リターナブル」という言葉が盛んに使われ、実践として大手メーカーを中心に「リターナブルパレット」が浸透しだした。
なぜそれ以前にリターナブルパレットが日本に復旧しなかったのか。従来、パレットを利用するメーカー側は大なり小なり、調達部とか購買部を組織として持っており、その部署の担当者は「一定以上の品質の商品をいかに安く仕入れられるか」が社内評価基準となっていることが多く、一方、供給側のパレットメーカーは自社標準品をいかに数多く売るかが命題となっていた。つまり、パレットメーカーはお客の全体最適を検討することも無く、パレット購入側の部分最適のお伺い営業を展開をしてきたわけである。最近ではホームページなどで盛んに自社売れ筋パレット商品をPR展開しているが、本来、パレットメーカーは創業時の原点に戻り、もっとお客様の現場に足を運ぶことはもとより、お客様の事業全体の中での物流容器のあり方を提案できるスキルを身につけなければ生き残れない時代が来たということである。
成果事例として
曙ブレーキの鋳物素材用リターナブルパレット開発の事例だと、月当たりの全体流動パレット数が4000パレットの従来のワンウェイ木枠梱包での費用は、木枠梱包代金、開梱バラシ工数費用、産廃処理経費で約3千円/個・月であり総額12百万円/月であった。これを鉄製のリターナブルパレットに切り替え、レンタルにすると、流動1万パレット、レンタル代千円/個・月で10百万円/月となり、3年間で合計72百万円のメリットが出ている。また、流動しているパレットの所在管理情報がレンタル会社から得られるため、自社で管理する煩わしさから開放されるメリットもある。このメリットを曙ブレーキ、現地素材メーカーが享受している。
他にも小職が曙ブレーキ在職中に梱包メーカーと共同開発したリターナブルボックスなどもそれぞれ大きなメリットを生み出している。
今回の鋳物素材リターナブルパレットの開発では、小職が曙ブレーキのOBということで現職の諸兄には大変なご迷惑(仕事の邪魔になったかも)をおかけしたり、各関係部署の皆さまの多大なご協力があったからこそ実現できたものと感謝しております。「たかがOB、されどOB」ということで一連の失礼をご勘弁いただきたい。
リターナブルパレットに求められる要素
1.リターナブルパレットの素材について
基本的に、リターナブルパレットは使い終わった(使えなくなった)時点で、その素材をすべてリサイクルすることを前提とすれば、分別する必要のない単一素材で製品構成されることが望ましい。理想として、オールスチールの場合はスクラップになっても有価で取引が可能で、しかも無駄なく循環原料になる。その他の素材(樹脂、段ポール、ゴム等)と組み合わせたとしても、分別が誰にでも簡単にできる設計とし、パレットとして機能しなくなったとしても、部品として使えるならばリユース、使えない場合は資源としてリサイクルし、再度、同商品・部品として循環することが理想である。
2.リターナブルパレットのIT化
経済産業省が実施している「電子タグ活用による流通・物流の効率化実証実験」は「ICタグを読めた、読めない」といった基礎的な実証実験は卒業し、具体的な投資効果の検証段階に入った。 当然、繰り返し使用するリターナブルパレットにも、そのパレットの特性、現場の特殊性、利用形態に合わせてICタグを選択することになる。
最近まで金属パレットに取り付けたICタグは読み取りにくいといった欠点があったが、デバイスメーカーの開発努力により、工夫すれば充分利用できるものも出てきている。
又、グローバル物流を考えた場合、日本だけで循環するパレットであれば問題ないが、世界各国を循環するリターナブルパレットにおいては、読み書き用のリーダ・ライターは各国で製品認証を受けたハンディターミナルを選択しなくてはならないといった規制も充分考慮しておく必要がある。
いずれにしても、RFIDは物流に限らず、世の中の色んな現象を大きく変える要素を持っており、その開発動向は要ウォッチしておくことが肝要である。
結びとして
循環型物流に取り組み始めてから10年余り、その間、多くの先輩、同僚、各企業のオピニオンリーダーの方々にご意見、ご指導を受けています。お礼しなければならない先生ばかりで数えれば切りがありません。
現在は物流環境管理士講座の講師を務めた小松崎克正氏とパートナーを組み、循環型パレットの開発を通して「パレットで物流の見える化」を推進しています。
内容的には①顧客ニーズの把握(現場主義)②設計・試作・テスト(アイデアをすぐに具現化)③製作(基本は中国で製造、徹底的なコストダウン)④輸入(関税などの諸問題もすべて解決した実績)⑤リース・レンタル契約(専門会社と提携)⑥国内輸送(静脈物流も可能な運輸会社と提携)⑦メンテナンス(⑥と同じ)⑧廃棄(⑥と同じ)⑨リサイクル(専門会社と提携) といった一連の業務をワンストップで提案・提供しています。現在、日本を代表する大手のお客様よりリターナブルパレットの引き合いを頂戴しており、08年度は現在の3倍の商量を目指しています。
私どもをパートナーとして選ばれたお客様には、自社の物流環境を一気通貫で見える環境を提供します。それがお客様の全体最適SCMの一助になればと信じて日々活動しております。
筆者プロフィール
- 中村 奎吾 (なかむら けいご)
- 1993年、物流士 取得(JILS)東京35001号。2001年、日本物流学会正会員(民間の第1次認定者)。2002年、曙ブレーキ工業を定年退職(経験は、購買、生産管理、営業、環境、物流。1990~2000年の10年間はトヨタ物流研究会メンバーとして現場研修400回以上実施) 。2005年、物流環境管理士取得(物流連)第067号。
- 現在、(株)拓洋(物流会社年商70億円 管理倉庫350棟 12万坪)顧問。循環型パレットの開発、販売及び顧客の物流センターの合理化を指導。
- TEL:090-3520-8478 FAX:03-5952-8748(拓洋 東京支店)
- E-mail:keinaka@msi.biglobe.ne.jp

