業界初の遠隔監視サービス「DREMOS」
業界初の遠隔監視サービス「DREMOS」 ~物流システムのリスクマネジメントを推進~
DTS(Daifuku Technology Service)事業部はこれまで、お客さまに納入した物流設備・システムが安定して稼働するようアフターサービス・メンテナンス体制を整備してまいりました。現在、24時間365日体制のコールセンター「SSC(System Support Center)」を中核として、全国60カ所のサービスネットワークを展開。お客さまのもとへ1時間以内で駆けつけられる体制を整えています。さらに、お客さまサービスの向上を目指し滋賀事業所内に設立した「総合サービスセンター」では、体験型研修を企画・実施する能力開発センター、在庫量9万点のパーツセンター、無人搬送車のオーバーホール工場などのサービス支援機能も備えています。
最新のネットワーク技術とモニタリング技術を活用し、2004年11月からサービスを開始した遠隔監視サービス「DREMOS(Daifuku Remote Monitoring Service)」についてご紹介します。
1. 「DREMOS」の概要
近年、ITを応用・駆使し、マテハン設備の保全業務や省力化に役立てようという気運が高まっています。特にリモート技術を利用してコンピュータやネットワーク、設備などの監視を行いたいというニーズは根強いものがあります。このニーズに対し当社は、NTTドコモグループが持つデジタル携帯電話網DoPa(R)を利用して遠隔監視システムを構築。「DREMOS」(図1)と称したサービスを提供しています。

- 図1. 「DREMOS」概要
「DREMOS」は、当社の自動倉庫などの物流システムを導入されたお客さまを対象にしたサービスメニューのひとつで、物流システム全体を専門技術者が24時間365日体制で遠隔監視します。構成要素は、(1)マテハンコンピュータや設備などをモニタリングする監視装置、(2)障害情報を伝送するデータ通信サービスDoPa(R)、(3)情報を集約する専用サーバなど。監視装置が障害の前兆や発生を感知し専用サーバに伝えると、その情報をSSCに待機する専門技術者と各サービス店舗の担当者が共有、緊密に連携しながら対応します。また、障害情報をその重要度、危険度により5段階のレベルに分類、内容・必要に応じてお客さまの携帯電話へメールで自動通知します。
●レベル1(非通知)
- ・オペレーションミスで発生しやすい異常
- ・荷姿異常/在荷異常
●レベル2(非通知)
- ・復旧時に発生しやすい異常
- ・光伝送異常/外部非常停止
●レベル3(通知)
- ・同一の障害が多発し、サービススタッフの派遣が必要となる可能性のある異常
- ・オーバーラン/インバータ異常/二重格納/空出荷
●レベル4(通知)
- ・部品交換など、物の手配とサービススタッフの派遣が必要な異常
- ・チェン切断/通信異常/速度監視オーバー
●レベル5(通知)
- ・地震/火災などの重大災害、またそれに準ずる事態
さらに、稼働状況を分析し、日次(メール)や月次(レポート)で報告を行いますので、お客さまには設備管理の労力を低減できるというメリットがあります。
なお、「DREMOS」の開発にあたっては、監視装置は株式会社ベイビッグ殿、データ通信サービスに関する部分は株式会社NTTドコモ関西殿と技術協力。コストパフォーマンスが高く、情報セキュリティが強固なシステムを実現しました。
2. 開発の背景
企業経営のキーワードとして、リスクマネジメントという言葉が新聞・雑誌などの報道で数多く取り上げられています。リスクマネジメントとは、将来発生する可能性のある事象をさまざまな手法を用いて予測し、最適な方法でそのリスクを回避することを言います。人類最初のリスクマネジメントは、創世期にノアが箱舟によって大洪水から免れた「ノアの箱舟伝説」と言われています。話の真偽は別として、大洪水の発生を予測して事前に逃れる術を準備するというストーリーは、リスクマネジメントの考え方に通じるものです。実際のリスクマネジメントという考え方は、1920~30年代以降アメリカで企業の費用管理の手法として、初めて適用されたと言われています。
では、コンピュータや設備などの物流システムを安定して、安全に、長期的に使用するためのリスクマネジメントには、どのような方法が考えられるでしょうか。もちろん各分野の専門技術者を各企業で抱え、日々コンピュータや設備の稼働状況のチェックを行えば、故障発生率は大きく低減します。しかし、その方法では莫大な費用が必要となり、最適な方法かどうか疑問が残ります。近年、SCMの進展に伴い、どの業種でも在庫を必要最小限に抑える傾向にあります。そのため、「必要なときに、必要なだけ、迅速に商品を届ける」物流システムの故障発生率を低減することは非常に大きな意味をもち、最適な予防保全対策を提供し物流システムのリスクマネジメントを推進することが、マテハンメーカーの使命となってきました。
そのような背景から開発を進めてきたのが、遠隔監視サービス「DREMOS」です。このサービスの最大の特長は、障害の発生を早期に知らせるだけではなく、前兆をとらえて障害の発生率そのものを低減させることにあります。また、コンピュータだけではなく、自動倉庫やコンベヤ、無人搬送車など、さまざまな物流設備を網羅して物流システム全体を総合的に監視するサービスは、これまでになかったものです。
物流システムを構成するコンピュータや設備が故障しシステム全体が停止に至る場合、何の前触れもなく突然故障停止するケースはそれほどありません。むしろ、Warning messageや各機器の軽微な障害の頻発など、何らかの前兆があるにもかかわらずそれを見逃した、または放置したがために故障停止するケースの方が多いと言われています。前者は、各機器の品質の問題もありますが、人為的なミスも多く含まれるため、その発生率を大きく削減することは容易ではありません。一方、後者は定期的な点検や専門技術者による監視などで、その多くを未然に防ぐことができます。
当社が行った調査では、軽微な障害の発生50回に対し、システム全体が2時間以上停止する重度障害が1回の割合で発生し、その重度障害のうちの30%は、「定期点検や遠隔監視を行うことにより未然に防止できた」との結果が出ています。そのような前兆を見逃さず捉える最適な予防保全対策が、物流システムのリスクマネジメントを推進する第一歩であると考えています。
3. 低価格で遠隔監視サービスを提供
「DREMOS」は障害の発生を予見するサービスであることをご説明しましたが、その他にも優れた特長を持っています。
まず第一に、低価格のサービスであること。どんなに優れたサービスでも、大きな開発コストや運営コストなどを必要とし、それをお客さまにご負担いただくようなシステムでは、その価値は半減してしまいます。「DREMOS」は、DoPa(R)網を利用したことに加え、既設のSSCに情報監視センター機能を持たせたことにより、標準導入価格30万円、月々のサービス料3万円(通信費含む)で導入できます。
DoPa(R)網を利用するメリットは、設備に対してLAN回線や電話回線のような敷設工事が不要なため、通信端末機(監視装置)の取り付けが容易に行えることがあげられます。工場や流通センターなどの立地では、回線を利用するための通信機器の導入を必要とすることが多く、アナログ通信回線しか開設できないケースもあります。DoPa(R)網を利用すれば回線工事は不要であり、また、事前に通信状態の確認をしておけば、導入時の現地確認作業が容易に行えるなどのメリットがあります。
さらに、通信にかかる費用を低減することができるのも利点のひとつです。公衆回線でダイヤルアップを行う場合、接続時間や監視センターとの距離に比例して料金が高くなり、通信データが少量であっても毎回ダイヤルアップで接続を行うため、その接続回数に対して課金されます。専用回線を利用した場合も、通信量にかかわらず月額の基本料金が必要で、同様に距離により料金も高くなります。一方、DoPa(R)によるパケット通信では、接続時間や距離ではなく通信データ量による従量課金制をとっているため、通信データ量をうまくコントロールすればランニングコストを低く抑えることができます。
低価格でサービスの提供を実現できたもうひとつの理由は、既存のコールセンター(SSC)に情報監視センター機能を持たせたことです。新たに監視センターを開設した場合は、その開設費や維持費などが必要になります。
また、サービスを提供するためのノウハウや技術情報・お客さま情報などの収集・管理といった運営に関する事項については、コストが発生するだけでなく、お客さまにご満足いただけるサービスを提供できるまでにある程度の時間を要することになります。その点、当社には1993年に開設した24時間365日対応のSSCがあり、ここに監視センター機能を持たせることにより、「DREMOS」の運営コストを低減することができました。
さらに、SSCの基幹システムであるTSSII(Total Support System)に蓄積された1万5,500件以上のお客さまデータ、点検実施日や改造記録などのサービス履歴データ、問合わせや障害通報といった対応履歴データ、障害対応のノウハウなどをフル活用。遠隔監視サービスをスムーズに開始し、コストパフォーマンスの高いサービスを提供することができました。

- 障害情報をSSCと各サービス店舗が共有して迅速に対応。
内容・必要に応じてお客さまの携帯電話にメールを送信する。
4. 情報セキュリティからみた遠隔監視サービス
2005年4月から施行された個人情報保護法や不正競争防止法の一部改定など、情報セキュリティ関連法規の整備が進んでいます。各企業においては、情報資産が一定の保護、管理下におかれていれば、不利益を被った企業側の権利が認められるなど利点も多くあります。しかし、一方では情報漏えいなどの事件が連日新聞紙上を賑わしており、情報セキュリティへの不安から遠隔監視サービス導入を見合わせるお客さまが増加するなど、遠隔監視技術の進展に少なからず影響を与えています。
そのようなお客さまの不安を払拭するため、当社では高いセキュリティを備えた遠隔監視サービスを提供することに注力してきました。お客さまの情報を保護するためには、不正なアクセスを防止するなど情報インフラのセキュリティと、監視センターで集約した情報が外部に漏えいすることのない管理体制が重要です。
当社では、情報インフラについては、前述のDoPa(R)網を利用しています。DoPa(R)では、お客さまごとにネットワークIDと呼ばれる番号が付与され、物流システムに設置された監視装置の固有番号とともに登録されます。さらに、登録番号を持たない機器からはアクセスできない高いセキュリティを実現しており、機密情報のやり取りに適していることも大きな特長のひとつです。
また、情報管理体制については、情報資産の保護が当社の果たすべき重要な社会的責任のひとつと考え、2005年3月に「情報セキュリティ基本方針」を定めました。従業員への教育や物理的・技術的な対策の実施など、全社をあげて情報セキュリティの強化を行っています。さらに、お客さま情報や遠隔監視などで収集した障害情報を取り扱うSSCでは、出入口およびTSSIIサーバルームのカメラ監視による入退室管理や、顧客データベースの定期的なアクセスログ調査など情報漏えい防止策を講じるとともに、情報セキュリティへの意識向上を図るための教育など「
情報セキュリティ基本方針」に則った取り組みを行っています。
「DREMOS」は、お客さまに十分に安心していただける、高いセキュリティを備えたサービスであると自負しています。
5. 今後の展望
以上、ご紹介しましたように、「DREMOS」は物流システムの故障停止時間を短縮するための非常に有効なソリューションです。
ただ、課題もないわけではありません。それは通信速度が低いこと。これはDoPa(R)網自体の速度の問題であり、専用回線を利用した場合は、28.8Kbpsから数Mbpsの通信速度が確保できるのに対し、DoPa(R)は9,600bpsと低く、大量のデータ通信には適していません。このため、残念ながら現状では画像の送受信などは行うことができません。
サービスを提供する立場では、迅速な障害復旧を行うため、どんな詳細データよりも現地の画像を見たいというニーズが多分にあります。リアルタイムのカメラ監視などもお客さまにとってメリットが大きいと考えています。また、監視センター側からのマニュアル提供など、現地への指示にも画像データを利用できれば、復旧作業が正確かつ容易に行え、二次障害の発生も防止できます。現在、導入が進んでいるFOMA(R)などの第3世代移動通信サービスでは、通信速度64Kbpsと高速データ通信をサポートしているため、ビジュアルコミュニケーションに適しているといえます。今後、この通信サービスに対応した通信端末機が多く提供されるようになれば、多様な映像通信機能を備えた遠隔監視サービスが開発できると考えています。
さらに、通信速度が向上することで、より詳細なデータ収集が可能になります。物流機器に使用される各部品の動作時間や動作回数などの詳細データを収集することにより、部品単位での機械寿命を正確に算出しタイミングよく交換を提案するなど、予防保全対策をさらに進化させる機能も付加していく考えです。
また、セキュリティ強化を実現できれば、現在、別のサービスメニューとして提供している「リモートメンテナンスサービス」(公衆回線を利用してコンピュータとSSCをオンラインで結び、データの確認や修正、復旧操作を行うサービス)の機能を取り込むことも可能です(図2)。物流システムを監視することと併せて、障害発生時には各機器の動作状況や事前のオペレーション記録など詳細なデータを確認し、監視センターから障害復旧を行うといった一連のサービスが提供できるようになり、一層の故障停止時間の短縮につながります。
当社では、物流システムを安定して、安全に、長期的に使用していただけるよう、今後もお客さまニーズに的確に応えるサービスの充実を目指してまいります。
* 「DoPa(R)」「FOMA(R)」はNTTドコモの登録商標です。

- 図2. 「DREMOS」と「リモートメンテナンスサービス」の融合
<Daifuku News No.177 (2005.9)より>
- 関連リンク
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